今回決定した美術作家のひとり、中村さんについて紹介します。
■アーティスト2
中村 厚子(なかむら あつこ)
https://www.atsukonakamura.com/

1982年 石川県生まれ
2005年 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業
2011 年 ロンドン大学スレード美術学校修士彫刻課程修了
現在は、神奈川県を拠点に制作活動を行う。
Instagram @atsukonakamura_studio
自然とは何か?生きるとは何か?自然を単なる資源として捉える近代的自然観や、自然と直接触れ合うことなく生活できる現代の都市生活に疑問を抱いたことから、「自然の循環」や「人と自然の関係」について探究し、制作する。
様々な場所を訪れ、自然と戯れ、地域住民との対話や交流を通して歴史や文化、彼らの自然観を学び、そこで見えてくる私なりの気づきをもとに、現地の自然素材や現象(流木、塩、水、波、気温、風など)を用い、〈私が作る部分〉と〈自然が作る部分〉を意識的に組み合わせながら、立体やインスタレーションを制作する。
最近は舞踏をベースに現地で見えるものや感じることを身体で即興的に表す「身体ドローイング」を生み出し、現地のリサーチや制作プロセスに取り入れ、ワークショップも行う。国内外で発表。
【主な展覧会、受賞歴】
2017年 MOT サテライト 2017 秋 – むすぶ風景- (清澄白河の各所、東京都現代美術館 / 東京)
2019年 瀬戸内国際芸術祭 秋会期 (塩飽家/ 香川・本島)
2022年 第29回 UBE ビエンナーレ (ときわ公園 / 宇部・山口)
【アーティスト・イン・レジデンス経験】
2022年 4月~8月 第29回 UBE ビエンナーレ出品作品制作のため、現地にて滞在制作 (宇部・山口)
2023年 4月~6月 Artist in Residence (BankART 1929 / 横浜)
【これまでの作品】

地神 Jigami Sound of Vitality
制作年:2005
素材:流木、水
サイズ:7.5m x 3.5m x 7.5m
発表場所:武蔵野美術大学卒業制作展、武蔵野美術大学優秀作品展
屋久島の人々の自然観と、島で目の当たりにした自然界の命と水の循環にインスピレーションを得て、制作。
島のある人は「我々は自然の循環のほんの一部に住まわせてもらっている。だから自分たちは自然を汚すことは許されず、自然に従って生きるべきだ」と語った。また別の人は「今日は山が怒っているから、私たちに登山することを
許さない」と表現した。
また森では、倒れた木を栄養源としその上で別の植物が成長する生命の循環や、海から上がった蒸気が雲となり、山に雨を降らせ、川となって海へと流れるという水の循環を目の当たりにした。
私は現代において未だこのアニミズム的考えが日常の暮らしに浸透し、自然の生態系が見に見える場所があることに驚き、水と共に山から海へと流れていた流木を用い制作した。

海境 水面のこちら側とあちら側で
制作年:2019
素材:ミクスドメディア
サイズ:可変
発表場所:瀬戸内国際芸術祭2019 本島
地元の潜水漁を営む漁師さんたちから伺った自然観や
体験談、そして自らが塩飽の海の複雑な潮流と巨大な
干満差に恐怖を感じた体験を元に、スモークとレーザ
ー光線を使って制作。

掘ることは生きること、生きることは掘ること
制作年:2022
素材:宇部の流木、焼き入れ加工、塗装
サイズ:1.8m x 5.2m x 2m
発表場所:第29回UBE Biennale
撮影者:©Hajime Majima
不安や葛藤を抱えながらも、どうにか掘り進めよう、出口に辿り着こう。 もがき、のたうち回り、体をうねらせ、力を振り絞り岩盤に立ち向かう。 激しくぶつかり、重なり、ねじれ、穴が空き、流れ込み、垂れる。 エネルギーは永遠に流れ続ける…。
